ドイツの水道水はそのまま飲める?|「硬水」の正体と、古い建物で気をつけたいこと
ドイツの水道水は、国の検査で「良い〜とても良い」と評価されています。それでも白い水あかがつくのはなぜ? 水の硬さの決まり、デュッセルドルフやケルンの水の硬さ、古い建物の鉛管と「朝いちばんの水」の注意点まで、連邦環境庁などの資料をもとに紹介します。
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目次(6項目)
ドイツのレストランで水を頼むと、ほとんどの場合ボトル入りの水が出てきます。スーパーにも炭酸入りの水がずらりと並んでいて、「ドイツの水道水は飲めないのでは?」と思う人も多いかもしれません。
このコラムでは、ドイツで暮らし始めた方や、子どもと一緒に暮らす家庭に向けて、ドイツの水道水がどれくらい安全なのか、電気ケトルやシャワーに白い水あかがつく「硬水」とは何か、そして古い建物で気をつけたい鉛管の話までを整理します。読み終えるころには、毎日の水を安心して使い分けられるようになるはずです。
答え:ドイツの水道水は、基本的にそのまま飲める
結論から言うと、ドイツの水道水は基本的にそのまま飲めます。
連邦保健省と連邦環境庁は、3年ごとに水道水の水質をまとめた報告を出しています。最新の報告(2020〜2022年)によると、大きな水道事業者が供給する水の質は「良い〜とても良い」とされ、ほぼすべての微生物・化学物質の項目で、99%を超える検査試料が水道水の基準(Trinkwasserverordnung)を満たしていました(連邦環境庁:水道水の水質・水質報告 2020〜2022年)。
同じ報告によると、地下水の汚れとしてよく話題になる硝酸塩の基準超過も減り続けていて、2022年には0.03%でした。
連邦環境庁は、水道水を「持続可能で、健康的で、安い」飲み物として勧めています(連邦環境庁:水道水のすすめ)。ペットボトルの水を買って運ぶ手間もゴミも減らせます。ボトルの水を買う場合は、デポジットの返し方を「ドイツのPfand返却方法」で紹介しています。
それでもボトルの水が出てくる理由
レストランでボトルの水が出てくるのは、水道水が危ないからではなく、飲み物として「売るもの」だからです。ドイツでは、炭酸入りの水を好む人も多く、食事と一緒に注文するのが一般的です。水道水がほしい場合は、お店によっては頼めば出してくれますが、出さないお店もあります。
白い水あかの正体は「硬さ」
ドイツで暮らすと、電気ケトルの底やシャワーヘッド、蛇口のまわりに白い固まりがつくことに気づきます。これは水に溶けているカルシウムなどが固まったもので、「水あか」や「石灰」と呼ばれます。
水に含まれるカルシウムやマグネシウムの多さを、「水の硬さ(硬度)」と言います。硬さが高い水を「硬水」、低い水を「軟水」と呼びます。日本の水道水は多くの地域で軟水ですが、ドイツには硬水の地域が多くあります。
法律で決まっている3つの区分
ドイツでは、洗剤の使用量を決める目安として、水の硬さを3つに区分することが法律で決まっています(洗剤法 第9条)。
この表は横にスクロールできます。表にフォーカスした後、左右の矢印キーでも内容を確認できます。
| 区分 | 炭酸カルシウム換算(1リットルあたり) | ドイツ硬度(°dH)の目安 |
|---|---|---|
| 軟らかい(weich) | 1.5ミリモル未満 | 約8.4°dH未満 |
| 中くらい(mittel) | 1.5〜2.5ミリモル | 約8.4〜14°dH |
| 硬い(hart) | 2.5ミリモルを超える | 約14°dHを超える |
ドイツでは硬さを「°dH(ドイツ硬度)」という単位で表すことが多く、洗剤の箱にも、この区分ごとの使用量が書かれています。住んでいる地域の硬さは、水道事業者のウェブサイトで調べられます(消費者センター)。
デュッセルドルフもケルンも「硬い」
NRWの大きな街の水は、どちらも「硬い」区分です。
- デュッセルドルフ:デュッセルドルフ都市公社(Stadtwerke Düsseldorf)は、市の水の硬さを約14°dHで「硬い」区分としています(デュッセルドルフ都市公社)。
- ケルン:ケルンの水道事業者ラインエネルギー(RheinEnergie)の水質分析(2025年の年間値)では、ライン川の左岸側で18.1°dH、右岸側で15.6°dHとなっています(ラインエネルギー:水質分析)。
同じ街の中でも、どの浄水場から水が来るかで硬さが少しずつ違います。正確な値は、住所ごとに水道事業者の案内で確認してください。
硬水は体に悪い?
硬水だからといって、飲んで体に悪いわけではありません。カルシウムやマグネシウムは、もともと体に必要なミネラルです。硬さは、味や家電の手入れに関わる「性質」の違いだと考えるとよいでしょう。
暮らしの上では、次のような工夫が役立ちます。
- 電気ケトルや食洗機の水あか:クエン酸や酢を使った市販の水あか取りで、ときどき掃除する。
- 食洗機:多くの食洗機には軟水化の仕組みがあり、専用の塩を入れて使います。説明書で、住んでいる地域の硬さに合わせて設定しましょう。
- 洗濯:洗剤の箱に書かれた、硬さの区分ごとの量を目安にする。入れすぎは環境にも財布にも負担です。
- 緑茶や日本茶:硬水で入れると、味や色が日本で飲むのと違って感じることがあります。気になる場合は、家庭用の浄水ポットを試す人もいます。
古い建物では「鉛管」と「朝いちばんの水」に注意
ドイツの水道水が安全なのは、水道事業者が家の手前まで届ける水の話です。建物の中の配管は、建物の持ち主の責任で、古い建物では配管が原因で水の質が下がることがあります。
鉛の水道管
連邦環境庁によると、鉛の基準を超えるのは、主に蛇口のところで、古い建物に残っている鉛の水道管が原因です。特に1973年より前に建てられた古い建物には、鉛管が残っていることがあります(連邦環境庁:鉛管と水道水)。
これに対し、ドイツでは2026年1月12日から、水道水に使う鉛管は原則として禁止され、建物の持ち主は鉛管を取り替えるか、使えないようにしなければならなくなりました。さらに2028年1月12日からは、鉛の基準値が1リットルあたり0.010ミリグラムから0.005ミリグラムに引き下げられます(連邦環境庁:鉛の基準値の引き下げ)。
古い建物に住んでいて心配な場合は、大家さんや管理会社に「鉛の水道管が残っていないか」を聞いてみましょう。答えがはっきりしない場合は、地域の保健所(Gesundheitsamt)に相談できます(消費者センター:鉛管の取り替え)。妊娠中の方や赤ちゃんのいる家庭は、特に確認しておくと安心です。
長く止まっていた水は流してから
鉛管があるかどうかに関係なく、連邦環境庁がすべての家庭に勧めている習慣があります。それは、配管の中に4時間以上たまっていた水は、飲んだり料理に使ったりしないことです(連邦環境庁)。
朝起きたときや、旅行から帰ったときは、水が冷たく感じられるようになるまで少し流してから使いましょう。流した水は、植物の水やりや掃除に使えば無駄になりません。
赤ちゃんのミルクに使うときは
赤ちゃんのミルクを作るときに水道水を使う家庭も多いと思います。鉛管がないことを確認したうえで、流して冷たくなった新しい水を使うことが基本です。ミルクの作り方や水の扱いについては、粉ミルクの説明書や小児科医の指示に従ってください。ドイツでの出産や子育ての準備は「ドイツでの出産と手続き」でも紹介しています。
水道水と上手につきあう
ドイツの水道水は、毎日飲める、身近で安い飲み物です。硬さによる水あかは少し手間ですが、性質を知っておけば怖いものではありません。古い建物に住んでいる場合だけ、配管のことを一度確かめておく。それだけで、水のことはぐっと気楽になります。
冬の住まいの湿気対策は「ドイツの冬のカビ・結露対策」もあわせてどうぞ。
参考情報(2026年10月27日参照)
- 連邦環境庁:水道水の水質
- 連邦保健省・連邦環境庁:水道水の水質報告(2020〜2022年)
- 連邦環境庁:水道水のすすめ
- 連邦環境庁:鉛管と水道水
- 連邦環境庁:鉛の基準値の引き下げ
- 洗剤法 第9条
- 消費者センター:水の硬さを調べる
- 消費者センター:鉛管の取り替え
- デュッセルドルフ都市公社:水の硬さ
- ラインエネルギー:ケルン左岸の水質分析
本記事は公開情報をもとにした一般的な生活情報です。住まいの水質に不安がある場合は、大家さん、水道事業者、地域の保健所にご相談ください。