12月になると、ドイツの家々の窓からは、ろうそくの光に照らされたもみの木が見えます。日本でもおなじみのクリスマスツリーですが、この習慣が育ったのは、ドイツ語を話す地域でした。

このコラムでは、ドイツで初めてクリスマスを迎える方や、子どもと一緒にツリーを飾りたい家庭に向けて、クリスマスツリーがどのように生まれ、ドイツの家庭に広まっていったのかを紹介します。最後に、今のドイツで毎年どれくらいのツリーが飾られているのか、ツリーを選ぶときのヒントもまとめました。

はじまりは、中世の「楽園の劇」

クリスマスツリーの起源として、よく語られるのが中世の「楽園の劇」です。

カトリック教会のポータルサイトによると、中世には、クリスマスの前の12月24日に、アダムとイブの物語を演じる劇が行われていました。この劇には「楽園の木」が登場し、劇の途中でその木からリンゴがもぎ取られました。初期のクリスマスツリーにリンゴが飾られたのは、この楽園の木の伝統を思い出すためだとされています(katholisch.de:クリスマスツリー)。

冬でも葉の緑を保つ常緑樹は、もともと生命の象徴として、冬の祭りに使われてきました。キリスト教の物語と、冬の緑を飾る習慣が重なって、クリスマスツリーの原型ができていったと考えられています。

1605年、シュトラスブルクの記録

クリスマスツリーについての古い記録として知られるのが、今はフランスの都市になっているシュトラスブルク(ストラスブール)のものです。当時、この街はドイツ語圏の一部でした。

カトリック教会のポータルサイトによると、神学者のマンフレート・ベッカー=フベルティは、シュトラスブルクで最初のクリスマスツリーが飾られたのを1605年としています。まだろうそくは付いていませんでした(katholisch.de:もみの木の勝利)。1539年にシュトラスブルクの大聖堂にツリーが立てられたという記録を挙げる説明もあり、「最初の1本」については、資料によって説明が分かれています(同上)。

ストラスブールは、今でもクリスマスマーケットで有名な街です。週末旅行のガイドは「ストラスブール週末旅行」で紹介しています。

最初は、教会に反対された

今ではクリスマスに欠かせないツリーですが、最初から歓迎されたわけではありません。

カトリック教会のポータルサイトによると、17世紀のシュトラスブルクの説教者ヨハン・コンラート・ダンハウアーは、クリスマスツリーを強く批判しました(katholisch.de:もみの木の勝利)。

それでも習慣は止まりませんでした。ツリーはまず、シュトラスブルク周辺のプロテスタントの地域で、教会の外へと広まっていきました。三十年戦争(1618〜1648年)が終わった後、17世紀から18世紀にかけて、町から町へと少しずつ広がっていきました(同上・katholisch.de:クリスマスツリー)。

19世紀、ろうそくの値段が下がって一気に広まる

クリスマスツリーがドイツ中の家庭に広まったのは、19世紀のことです。

カトリック教会のポータルサイトによると、ツリーがプロテスタントとカトリックの両方からクリスマスの象徴として認められたのは19世紀になってからでした。同じころ、19世紀前半にステアリンやパラフィンといった、ろうそくの新しい材料が発明され、それまで高価だったろうそくが、貧しい家庭でも買えるようになりました(katholisch.de:もみの木の勝利)。

リンゴやお菓子、木の実を飾り、ろうそくを灯したもみの木。私たちがよく知るクリスマスツリーの姿は、こうして19世紀のドイツで形づくられました。その後、ドイツから移り住んだ人々などを通じて、ヨーロッパの他の国やアメリカにも広まっていきました。

中世の楽園の劇、1605年のシュトラスブルクの記録、17世紀の教会の批判、三十年戦争後の広がり、19世紀のろうそくの普及までを示した年表
図解:J-Connect。katholisch.deの資料に基づく(2026年10月27日参照)。

今のドイツ:年に2,000万本以上のツリー

では、今のドイツでは、どれくらいのクリスマスツリーが飾られているのでしょうか。

ドイツ森林保護協会(SDW)によると、ドイツの家庭のリビングには、毎年およそ2,300万〜2,500万本のクリスマスツリーが飾られています。そのうち最も多いのが、ノルドマンもみ(Nordmanntanne)です。SDWは、その割合を約75〜80%としています(SDW:クリスマスツリー)。葉が柔らかく、針葉が落ちにくいことから人気があります。

連邦統計局によると、2024年にドイツに輸入されたクリスマスツリーは180万本で、そのうち83%がデンマークからでした。同じ年、国内でクリスマスツリーを育てている農家は3,310軒ありました(連邦統計局)。飾られるツリーの多くは、ドイツ国内で育てられたものなのです。

ドイツで毎年飾られるクリスマスツリー約2,300万〜2,500万本、ノルドマンもみの割合約75〜80%、2024年の輸入180万本(デンマーク産83%)、国内の栽培農家3,310軒を示した図
図解:J-Connect。ドイツ森林保護協会と連邦統計局の資料に基づく(2026年10月27日参照)。

ツリーを選ぶときのヒント

ドイツでは、12月に入るとスーパーの駐車場や広場、ホームセンターなどに、ツリーの売り場が現れます。森の中の農園で、自分でツリーを切らせてくれるところもあります。

連邦環境庁は、環境に配慮するなら、地域で育てられ、エコ認証を受けたツリーを選ぶよう勧めています(連邦環境庁:クリスマスツリー)。遠くから運ばれてきたものより輸送の負担が少なく、農薬の使用も抑えられているためです。

ほかにも、次のような点を知っておくと便利です。

  • 飾る時期:ドイツでは、12月24日のクリスマスイブに初めて飾る家庭が伝統的です。今では、アドベントの間に早めに飾る家庭も増えています。
  • 片づける時期:1月6日の公現祭(三賢王の日)ごろまで飾るのが一般的です。
  • ツリーの処分:使い終わったツリーは、多くの市で1月に回収日が設けられています。飾りをすべて外して、決められた日に出しましょう。ゴミの出し方は「ドイツのゴミ分別」で紹介しています。
  • ろうそくに注意:本物のろうそくを使う家庭もありますが、乾いた枝は燃えやすく危険です。小さな子どもがいる家庭では、LEDのライトが安心です。

アドベントクランツやアドベントカレンダーの話は「アドベントクランツとアドベントカレンダーはドイツ生まれ?」で紹介しています。リンゴを飾った楽園の木から始まったツリーの物語を思い浮かべながら、ドイツのクリスマスを楽しんでみてください。

参考情報(2026年10月27日参照)

本記事は公開情報をもとにした文化紹介です。習慣の始まりには諸説あり、資料によって説明が異なる場合があります。

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