11月の終わりになると、ドイツのスーパーにはモミの枝の輪と太いろうそく、そして小さな扉がたくさん付いたカレンダーが並び始めます。クリスマスを待つ4週間「アドベント(待降節)」の始まりです。

このコラムでは、ドイツで初めて冬を迎える方や、子どもと一緒にクリスマスを楽しみたい家庭に向けて、アドベントクランツ(ろうそくの輪)とアドベントカレンダーがどのように生まれたのかを紹介します。どちらもドイツで生まれた習慣で、その始まりには、子どもたちを喜ばせたいという、身近な思いがありました。2026年のアドベントの日程もまとめています。

アドベントとは、クリスマスを「待つ」季節

アドベント(Advent)は、ラテン語で「到来」を意味する言葉に由来し、キリストの誕生を祝うクリスマスを待ち、準備する期間です。クリスマス前の4回の日曜日を数えるので、毎年11月27日から12月3日のあいだの日曜日に始まります。キリスト教の教会の暦では、この第1アドベントの日曜日から、新しい1年が始まります。

2026年の第1アドベントは11月29日です。続いて12月6日が第2アドベント、12月13日が第3アドベント、12月20日が第4アドベントになります(ケルン大司教区)。

アドベントの長さは、クリスマスイブの曜日によって変わり、最も短い年で22日、最も長い年で28日です。2026年は11月29日から12月24日までの26日間です。

アドベントクランツ:1839年、ハンブルクの子どもたちのために

アドベントクランツを考えたのは、ハンブルクの牧師ヨハン・ヒンリヒ・ヴィヒェルン(1808〜1881年)です。

ヴィヒェルンは1833年、ハンブルクに「ラウエス・ハウス(Rauhes Haus)」という施設を作り、貧しい家庭や行き場のない子どもたちと一緒に暮らしていました(ラウエス・ハウスの歴史)。

カトリック教会のポータルサイトによると、子どもたちは毎年、「クリスマスまであと何日?」と何度も聞いてきたそうです。そこで1839年12月、ヴィヒェルンは古い荷車の車輪にろうそくを立て、毎日1本ずつ火を灯していくことにしました。日曜日には大きな白いろうそく、平日には小さな赤いろうそく。灯るろうそくが増えていくのを見れば、クリスマスまでの日数がひと目で分かります(katholisch.de:アドベントクランツを考えた人)。

最初のクランツには、まだモミの枝はありませんでした。車輪にモミの枝が巻かれるようになったのは、1860年ごろのことです(同上・EKD)。

20本以上から、4本へ

ヴィヒェルンのクランツには、その年のアドベントの日数だけろうそくが立っていたので、毎年20本以上ありました。家庭に広まるにつれて、日曜日の分の4本だけを立てる今の形が一般的になりました。

最初はプロテスタントの市民の家庭の習慣でしたが、20世紀に入るとカトリックの家庭にも広がり、1920年代にはカトリックの家庭でも飾られるようになりました(katholisch.de)。今では宗派に関係なく、ドイツの冬の風景の一部になっています。

ハンブルクのラウエス・ハウスでは、今もヴィヒェルンの形のクランツが飾られ、2008年からは毎年、ヴィヒェルン式のクランツが連邦議会に贈られています(EKD)。

1839年のヴィヒェルンの車輪のクランツ(日曜日は白い大きなろうそく、平日は赤い小さなろうそく)と、今の4本のろうそくのクランツを比べた図
図解:J-Connect。katholisch.de、EKD、ラウエス・ハウスの資料に基づく(2026年10月27日参照)。

アドベントカレンダー:母親の手作りから、印刷へ

12月1日から24日まで、毎日1つずつ扉を開けていくアドベントカレンダーも、ドイツで生まれた習慣です。

チョークの線と、壁の絵

カトリック教会のポータルサイトによると、19世紀のドイツの家庭では、クリスマスまでの日数を数えるために、ドアに24本のチョークの線を引いて毎日1本ずつ消したり、壁に24枚の絵を1枚ずつ飾ったりしていました。1851年に出版された子ども向けの本にも、毎晩1枚ずつ新しい絵を壁にかける様子が描かれています(katholisch.de:アドベントカレンダーの歴史)。ドイツ福音主義教会は、こうした手作りの先駆けが、主にプロテスタントの家庭で生まれたとしています(EKD)。

ゲアハルト・ラングと「24の小箱」

印刷されたアドベントカレンダーを広めた人として知られるのが、ミュンヘンの印刷業者ゲアハルト・ラングです。

カトリック教会のポータルサイトによると、ラングが子どものころ、母親は24の小さな仕切りのある厚紙の箱を作り、毎日1つずつお菓子を入れてくれました。大人になったラングはこの思い出をもとに、1908年に印刷のアドベントカレンダーを売り出しました。24のマス目がある台紙と、切り抜いて貼る24枚の絵がセットになったもので、まだ「扉」はありませんでした。ラングの会社は1940年に閉じるまで、アドベントカレンダーを作り続けたそうです(katholisch.de・EKD)。

ただし、1902年や1904年にも印刷のカレンダーがあったという記録もあり、「最初の1枚」がどれかについては、資料によって説明が分かれています(同上)。

今では、チョコレート入りのもの、紅茶や化粧品が入ったもの、24個の小さなおもちゃが入ったものまで、さまざまなアドベントカレンダーが売られています。手作りの袋や箱を24個つるす家庭も多く、ラングの母親の箱に近い形が、今もドイツの家庭で受け継がれています。

19世紀のチョークの線や壁の絵、1908年の印刷のカレンダー、今の扉付きカレンダーへと変わってきた流れを示す年表
図解:J-Connect。katholisch.de、EKDの資料に基づく(2026年10月27日参照)。

アドベントの季節の、ほかの楽しみ

アドベントの4週間には、クランツとカレンダー以外にも楽しみがあります。

  • クリスマスマーケット:多くの街で、11月の後半からクリスマスマーケットが始まります。デュッセルドルフのマーケットは「デュッセルドルフのクリスマスマーケット2026」で紹介しています。
  • 12月6日の聖ニコラウスの日:前の晩に子どもたちが靴を玄関に置いておくと、朝にはお菓子やみかんが入っている、という習慣があります。2026年は第2アドベントと同じ日曜日です。
  • クリスマスのお菓子:シュトレンやレープクーヘン、家庭で焼くクッキーなど、アドベントの間に少しずつ楽しむお菓子がたくさんあります。

初めてのアドベントを楽しむには

日本ではクリスマスというと12月24日と25日が中心ですが、ドイツでは、クリスマスまでの「待つ時間」そのものを大切にします。

小さなクランツを1つテーブルに置き、日曜日ごとにろうそくを1本ずつ増やしていく。子どもと一緒に、毎朝カレンダーの扉を1つずつ開ける。それだけで、暗く寒いドイツの冬の毎日が、少し楽しみな時間に変わります。

ろうそくを使うときは、火のそばを離れないこと、乾いたモミの枝は燃えやすいことに気をつけましょう。小さな子どもがいる家庭では、LEDのろうそくを使うのも一つの方法です。

ちなみに、ラインラントではクリスマスの季節の間、カーニバルはお休みです。11月11日に始まったカーニバルの話は「なぜカーニバルは11月11日11時11分に始まる?」でどうぞ。

参考情報(2026年10月27日参照)

本記事は公開情報をもとにした文化紹介です。習慣の始まりには諸説あり、資料によって説明が異なる場合があります。

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