ドイツ政府がまとめた賃貸法の改正案「賃貸法II(Mietrecht II)」について、連邦議会の法務委員会が2026年10月14日に公聴会を開きました。家具付きの物件、期間を決めた短期の賃貸、物価に連動する「インデックス賃料」のルールを見直す内容です。

このニュースでは、ドイツで部屋を借りている方や、これから借りる予定の方に向けて、改正案の中身を整理します。駐在や留学の最初の住まいとして家具付き物件を選ぶ日本人は多いので、何が変わりそうか、そしてまだ決まっていない点はどこかを知っておくと役に立つはずです。

何が議論されているのか

連邦司法・消費者保護省によると、連邦政府は2026年4月29日、賃貸法の改正案を閣議決定しました(連邦司法・消費者保護省)。ねらいは、家賃の上限を定める「家賃ブレーキ(Mietpreisbremse)」の抜け道をふさぎ、借りる人を守ることです。

家賃ブレーキは、住宅が足りない地域で、新しく借りるときの家賃を、その地域の相場の家賃から10%までに抑えるルールです。すでに2029年末まで延長されています。ところが、家具付きの物件や短期の賃貸では、家具代などの名目で家賃が高くなりやすく、ルールが分かりにくいことが問題になっていました。

改正案の主な柱は次の4つです(連邦司法・消費者保護省:政府案の概要)。

この表は横にスクロールできます。表にフォーカスした後、左右の矢印キーでも内容を確認できます。

テーマ改正案の内容
家具付きの物件家具代(家具の上乗せ分)を契約で分けて書く。書いていなければ、家具なしの物件として扱う
家具代の目安すべての家具がそろった物件は、家具を除いた家賃の10%までを目安にできる
短期の賃貸期間は原則6か月まで(条件によって合計8か月まで)。借りる人に短期で住む理由が必要
インデックス賃料住宅が足りない地域では、物価上昇が年3%を超えた分は、半分しか家賃に反映できない
家具付き物件は家具代を分けて書き、すべての家具がそろった物件は家賃の10%が目安、短期賃貸は原則6か月まで、インデックス賃料は物価上昇3%を超えた分は半分だけ反映という改正案の4つの柱を示した図
図解:J-Connect。連邦司法・消費者保護省の資料に基づく(2026年10月29日参照)。

家具付き物件:家具代を「見える化」

改正案では、家具付きの物件を貸すとき、家主は家具の分の上乗せを、家賃とは分けて契約に書く必要があります。書かれていない場合は、家具なしの物件として家賃ブレーキが当てはめられます(連邦司法・消費者保護省:よくある質問)。

家具の上乗せは、家具の今の価値をもとに決めるのが原則です。すべての家具がそろった物件については、家具を除いた家賃(Nettokaltmiete)の10%までを目安として使えるようにする案です(同上)。

たとえば、家具を除いた家賃が1,000ユーロの物件なら、家具の上乗せは100ユーロが目安になります。今は、家具付きというだけで家賃がかなり高く設定されている物件もあるため、借りる人にとっては、家賃が妥当かどうかを確かめやすくなります。

短期の賃貸:原則6か月まで

ドイツでは、出張や研修、引っ越しまでのつなぎなど、短い期間だけ部屋を借りることがあります。こうした「一時的な利用のための賃貸」は、今は家賃ブレーキの対象外です。

改正案では、この短期の賃貸を原則6か月までとし、条件によっては合計8か月まで延ばせるようにします。また、借りる人の側に、短期で住む特別な理由があることを条件として法律に書き込みます(連邦司法・消費者保護省:政府案の概要)。短期の契約を何度もつなげて、家賃ブレーキを避けることを防ぐねらいです。

インデックス賃料:物価が大きく上がったときの上限

インデックス賃料(Indexmiete)は、家賃が消費者物価の動きに合わせて変わる契約です。物価が大きく上がった2022〜2023年には、家賃が急に上がった家庭も少なくありませんでした。2026年9月の物価上昇率は3.3%で、再び注目されています(ドイツの9月物価は3.3%上昇)。

改正案では、住宅が足りない地域で、物価の上昇が年3%を超えた部分については、その半分しか家賃の値上げに使えないようにします。この決まりは、すでに結ばれているインデックス賃料の契約にも当てはめる案です(連邦司法・消費者保護省:よくある質問)。

たとえば、物価が1年で5%上がった場合、3%までは家賃に反映できますが、残りの2%はその半分の1%だけになり、家賃の値上げは合計4%までになります。

物価が1年で5%上がった場合、3%までは全部、3%を超えた2%は半分の1%だけ反映され、家賃の値上げは合計4%までになるという計算例を示した図
図解:J-Connect。連邦司法・消費者保護省の資料に基づく計算例(2026年10月29日参照)。

そのほかの変更点

  • 家賃の滞納による解約:家賃を滞納して解約を告げられても、決められた期間内に滞納分を払えば解約が無効になる仕組みを、通常の解約にも広げます。
  • 改修による家賃の値上げ:簡単な手続きで家賃を上げられる改修工事の費用の上限を、1万ユーロから2万ユーロに引き上げます。

(出典:連邦議会)

公聴会では賛否が分かれた

連邦議会によると、10月14日の公聴会では、7人の専門家の評価が分かれました(連邦議会)。

  • 不動産業界は、短期の賃貸に細かい期限を設けるなど、規制が複雑になりすぎると反対しました。
  • 借りる人を支援する団体は、家具代を10%までなら妥当とする目安は適切ではないと批判し、6か月という短期賃貸の期間も長すぎるとしました。一方で、短期の契約をつなげることを事実上できなくする点は評価しました。

まだ決定ではない

今回の改正案は、連邦議会で審議中で、まだ法律として決まったわけではありません。審議の中で、家具代の目安や短期賃貸の期間が変わる可能性もあります。いつから適用されるかも、法律が成立するまでは確定しません。

部屋を借りる人が今できること

  1. 契約書の家賃の内訳を確認:家具付きの物件では、家具の分がいくらなのかを家主に聞いてみましょう。
  2. インデックス賃料の契約かどうかを確認:契約書に「Indexmiete」と書かれていれば、物価に合わせて家賃が変わる契約です。
  3. 短期の契約は期間と理由を確認:数か月の契約をくり返し更新している場合は、契約の形が今後のルールに合うか、借りる人の団体などで相談できます。

ドイツでの部屋探しの基本は「ドイツの賃貸物件の探し方」で紹介しています。

参考情報(2026年10月29日参照)

本記事は2026年10月29日時点の公開情報をもとにした一般的な情報で、法律相談ではありません。法案は連邦議会で審議中で、内容は変わる可能性があります。個別の契約については、借りる人の団体(Mieterverein)や弁護士にご相談ください。

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